出だしの二ヶ月が濃すぎて、年末に活動量をグラフにでもしてみたら、間違いなくピークの一つがある予感。
一月末、大人の遠足
二月初旬 期日前投票の帰りにふらっと行ったら山登り級だった神社+その翌日笑う膝とともに文フリ広島
二月中旬 落語連続二日間
以上、五日間の平均 10,638歩/ day
それでも一ヶ月平均にすると5,500歩くらいになってしまうのは、用事のない週末にはお犬と散歩に行くだけで3,000歩に満たないためである。用事って大事。仕事も用事。
さて本題。
二月中旬、二日続けて落語を聴きに行く。終業時間が近づくにつれ、そわそわし、ダッシュで駅へ向かう。電車の中から友人に、脱出成功! と高揚感にあふれた連絡を送る。
お目当ては、落語家の林家あんこさん。
二日間でアタマというか胸の奥ってやつがぼうぼうと燃えた。


左から、上方落語家の露の瑞(つゆのみずほ)さん、林家あんこさん。
右の写真、赤いワンピースは「おしゃべりアートライター」井川茉代さん、そして林家あんこさん。いずれも撮影可能タイムのもの。
落語は、寄席や独演会で四、五回行ったことがある。なんとなく好きな雰囲気の中で楽しく笑える、という程度の認識だった。
それが、文字どおり天地がひっくりかえるほどの衝撃をもたらした。何発も張られたみたいな気分だった。
<day 1>
露の瑞さんの「しじみ売り」「ちりとてちん」、林家あんこさんの「松山鏡」。古典落語には噺家さんの個性による味付け。守破離、という言葉が頭をよぎって、繰り返し鍛錬した型が、少しずつ自分の出汁によって味変されて、その噺家さんしか醸し出せない味わいになっていくんだろうな、というのが胸に落ちていく。考えてみれば当たり前のことだ、それが芸というものだ、それなのに私ってば今まで落語の何を聴いていたんだろう。
クラシック音楽のような? いや、ジャズの方がピッタリくる。
まず一発目。
二発目。「しじみ売り」を聴きながら、これはいつどこで笑いに変わるのかしら、などと思っていたのだった。途中で、私はもしかして、落語を笑いの面でしか捉えたことがなかったのだな、と気づいて背中がぞわぞわした。瑞さんは、役柄に深く入り込んで、あの軽妙なトークとは違う、憑依したような表情で、例えが適切かどうかは置いておいて「あ、北島マヤだ」とひそかに震えていた。
先にそのことに気づいてから、あんこさんの創作落語「北斎の娘」を聴けて良かった。「北斎の娘」である応為(お栄)の創作観に、心がぐらりと動いた。けれども、二日目の「北斎の娘」が私に何をもたらすのか、その時は考えもしなかった。
<day 2>
井川茉代(通称いかまよ)さんはアートライターとのことで、女性絵師の応為と関連づけということかしら、落語家さんとの組み合わせって面白いな、と思いながら開演を待つ。まずはいかまよさんから女性画家のお話。
いやいや面白いなんて程度のものではなかった。話が前後するけれど、あんこさんの噺が終わったあとのトークショー、いかまよさんからの質問。全てひっくるめて、鮮やかだった。難しい話をされているわけではなくて、客にもよくわかる。反面、これが誰にでもできることではないこともわかる。このひとも守破離のひとだ。三発目。
そして「北斎の娘」。今夜は新しい登場人物がいるね、と思ったのも束の間。私は、引き摺り込まれるように応為の側にいた。やりきれないほど応為が近かった。
女性ナントカ、とつくこと。そこに目を瞑らなければ生きていけない。でもそうしながら少しずつ歩んできた女のひとが、次のひとにはもう少し目を開けてもいいんだよ、と言葉ではなく小さな結果を置いていく。そして、そのひとがまた次のひとに。そうやって、たくさんの無名のひとが、道を作ってくれた。
だから今、私は働いていられる。でもまだ、女性の比率をあげましょう、とか、会議で真面目に論じられて、同じ能力なら男性ではなく女性を採用します、とかそんなことを言う。
ちがうんだ。そのひとを見てくれ。私が男か女か、そんなことじゃなくて、私を見てくれ。
応為は、私を見てくれ、が、私の成したものを見てくれ、であることに気づいたのだろう。そして、そこから「私」が消えていく。
そこにあるものをそのまま見てくれ。
落款があろうとなかろうと、これをいい画だと思うかい?
女性絵師のやるせなさと、究極の創作論とが縦と横の糸みたいだ。この作品の主題は一つじゃなくて、見る人によって少しずつ違うものになる。出来上がった織物は、見る人によって違う色になる。
我にかえったあと、おそるべき作品だ、と感じ入った。
四発目、以降、いまだに往復ビンタ状態。
応為の顔が消えて、いかまよさんの質問に答え続けているあんこさん。いつまでも聴いていたいと思わせるほど、自然な受け答え。
かっこいいひとだ、と思った。
せっかく目の前においでなのに、どきどきし過ぎて、すっごいよかったです、くらいしか言えなかった。
帰りに友人と、私たちもしかして空腹なんではないか? とスタバで小腹を満たすことにする。
友人のお身内である、ということでお名前を知った林家あんこさん。今や、その枕詞は吹き飛び、唯一無二の落語家として応援していきたい! と、口から泡を飛ばす勢いで語り合った。
サンドイッチのかけらまで飛ばしていないことを願う。

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