十三夜のひとりごと

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 我が家の仏壇は高さ37センチほどである。木目がしゃっきりして、とても気分が落ち着く。先日思い立って飾り戸棚に納めてみたら、一角にしっぽりとはまって、さらに落ち着きを増した。

 今朝、ろうそくを灯してから傍を見やると、線香立てが空であった。戸棚の下からストックの入っているカゴを取り出して、どの線香にしようかと考える。

 些細なことだが経験するまでわからずにいたことの一つに、線香を自分で買うということはなかなか無いのだな、というのがある。

 仏壇をあつらえたのは父である。六年前、母が旅立った時であった。初盆に線香を持っていったら父がちょっと困ったような顔をして「要らんのに」と言ったことを思い出す。「これはお母さんの好きだった宇野千代さんの、薄墨の桜、という線香だよ」と少しムキになって言い返したことも。

 父が亡くなった折に、葬儀屋さんやお寺さん、親戚、友人からいただいた線香が、もう四年が経つというのにまだ、ある。薄墨の桜、の線香さえもまだ、一緒にある。こういうことだったのか、と父の顔を思い出しながら思う。選ぶのに迷うほど何種類も、何箱も。
 このカゴの中には、どなたかがくださった気持ちが並んでいるのだと今更のように思う。
 それが毎日、一本ずつあちらへ届けられていく。悼みはあたたかさと香りにかわってたなびいていく。

 

 

 

 

 

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