お盆休み、というのはなくて通常営業中。夏休みはみんなバラバラにとるので、私は秋休みになる予定。
今だって、暦の上では秋、気温からすると信じられないような気がする。でもちゃんと秋に向かっている。ベランダのコムラサキシキブの実が、少しずつ色づいているのに気がついた(トップ画像)。
そうしたら読んでいた物語にこの植物が登場してびっくりしつつ心を踊らせた。初、浅井まかて。デビュー作だそう。
花競べ 向嶋なずな屋繁盛記 (講談社文庫) 浅井まかて 著
江戸中期のお話で、松平定信が出てくる。主人公の一人が修行した植木屋の先祖、伊藤伊兵衛も調べてみれば実在の人物だ。架空の登場人物、史実とフィクションの織り込み具合。ううむ、と唸る。ふわっと時代物の雰囲気があるような掌編を書いたりしてきたけれど、次の話ではきちんと時代設定をしてみようと思うなど。キャラクターだけが浮かんでいるものがあるのだけれど、時代物と相性がいいかもしれないと思い始める。
先週末の三連休で、すごい久しぶりに、きっと一年以上ぶりに鍵盤に触れた。長らく、サビのメロディだけが頭の中をリフレインしていたのだけど、実際音に出してみたらやっぱり好きな感じだった。今、あるのはこれだけなので、どんなAメロBメロをもってきたら繋がるかな、と適当に弾いてみる。きっと何日もこうやって弾き流しているうちに、生まれてくるフレーズがあると思う。イメージは夜、とても静かな穏やかな闇。
同じ三連休のひとときを、友人と本屋巡りをして過ごしたのだった。うち一軒はカフェのようなところにいくつかの古本屋さんが集まって出店されている形態。冊数としては少ないのに、出会う時はちゃんと出会う。これが目についたのはきっと、ピアノに触っていたからだ。
音楽は自由にする(新潮文庫) 坂本龍一 著
楽譜も売られていて、Scott JoplinのThe entertainerなど三曲入りのものを選ぶ。ウムラウトがあってドイツのものっぽい。これは連弾譜で、今まであまり見たことがない。メインのメロと、ベースと、裏メロとをこんな風に配置しているのか、というのがとても興味深くて。店主のお一人がしみじみと、ああ嬉しいJoplinが売れた、とおっしゃるのでこちらまで嬉しくなる。
一緒に心置きなく本屋を歩ける友人はなかなか無い、という話で盛り上がる。その友人とは創るものが違うけれど、底のところまでたどっていくと共通項がたくさんある。この方だけではなくて、創作のお仲間たちと過ごす時間には魔力がある。たとえその場で創作の話をしていなくても、興味の向きは異なっていても、何かをふいっと切り取ったりするその感覚が面白いからかもしれない。
上記の坂本龍一の傍で、並行読しているのがこれ。
少女ソフィアの夏(講談社) トーベ・ヤンソン 著
ご存知ムーミンの著者。こんな風に書きたい。設定も何もかもが違うのだけれど、根底に長兵衛を感じる。というか、長兵衛を書いてなかったら、これを好きだと思わなかったかもしれない。
昨年の今頃、七十二候にあわせて書いていたもの。七十二篇の中には、読み返すと頭を抱えたくなるようなものと、ふーんと思うものと、まずまず気に入っているものとがあるけれど、これは割と良い方の部類かと思っている。
踊(おどり)
ひぐらしが止んでしばらく、群青色があたりを支配する。
金兵衛の屋敷では、久兵衛が縁側に胡座をかいて雲のぼんやりと白い流れを眺めている。
蝋燭から提灯に火を移すと、金兵衛は幼馴染の隣に腰をおろした。なにを語るでもない、ただ、静かに過ごす。
青の色はそろそろと濃く、風はやさしくなる。
やもめ二人、今宵ばかりは酒を呑まぬ。
りーん。
おりんの響きが透きとおり、空はいよいよ深くなる。
仏壇の前で手を合わせていた銀兵衛と長兵衛が無言のままするする、と庭へ降りた。
懐から黒塗りの横笛をとりだし、久兵衛は細く長く息を吹き込む。
おとは、高くも低くも、重くも軽くもなく、ただ線香の煙と混じり合う。銀兵衛が右の手を天を向ければ、長兵衛は右の足を少し前へ。その足が地につけば左の手が天へ。二人は交互に手足を操り、音を掬うかのようにゆっくりと舞う。
空には精霊牛と馬がかえってゆく道が口を開け、漂う笛の音を連れて、やがて薄れて消えてゆく。
・・・長夜の長兵衛 寒蟬鳴(ひぐらしなく) (穂音いづみ)
ある方向へ意識を向けると、とととっと関連しあう事どもがやってくる。それをあらためて感じた、小さな出来事たちだった。


コメント
夏の日の午後に一服の清涼剤のようなエッセイでした。
ありがとうございます。
長兵衛の寒蟬鳴。やはりうっとりします。
トーベ・ヤンソンの「少女ソフィアの夏」。
根底に長兵衛を感じる、と聞いて読んでみたくなりました!
秋休みまでまだもう少し酷暑が続きますが、お身体お大切に……
みらいさん
ホニョーラブログへのお越し、ありがとうございます!
昨年の今頃は、長兵衛とずっといたんだなあと不思議な気持ちで読み返しています。
「少女ソフィアの夏」は児童文学の棚で見つけたのですが、大人に良く染み込むような気がしています。ご縁がありましたら、是非。
暑さが続きますね。お互いに身体を大切にいたしましょうね。
長兵衛は息まで形となって見えてくるようで。脳内で幻想的な風景がゆらゆらと流れております。
はそやmさん
ありがとうございます。この回は、特に幻想的な色合いが濃いかもと思います。牛さんも、大仕事を終えてくつろいでいるでしょうか。
まだまだ暑いですね!
でもゆっくりと秋が近づく気配はところどころで感じるようになりました。
本屋ツアーの日は私も本当に充実した一日になったので内容を読んで嬉しい気持ちです。
本当創作の根っこでは同じ気持ちを持って挑んでいる。
きっと昔も今もそうして創作を志す人がお互いに応援を送り合うから、創作が育っていくように思います。
ニッチさん
本当に! とっても充実した日でした。ゆっくり読み進めていますがとても面白くて、良いものと出会ったなあと思っています。
創るものは違えども、わかることがたくさんある。自分が創り始めてから、興味の範囲が広がりました。そういう繋がり方もあると知れて豊かになった気持ちです。
ムラサキシキブの頃になったのね、と写真を見ながら少しずつ感じ始めた秋の兆しを思いました。長兵衛さんが季節の折々にいらっしゃるようです。
少女ソフィアの夏、私も読みました。
いろいろお話ししたーい。
marmaladeさん
日中は暑いけど、朝晩の空気を感じると季節が変わったなと思います。長兵衛、今はどこを旅しているのかなあ。
少女ソフィア、とってもいいですね。最初は姪のために求めたのでしたが、読んでみたらこれは私にぴったりだと思ったの。ぜひ、お話ししましょ!